Tech303

技術者の心得 : 実験の進め方に関する10ヵ条(その6)

開発と実験には技術者が必ず通る道がある

西畑三樹男  森川 愼

実験結果の整理(データは技術屋の無形の財産である)

 技術者は、社内でも現場でも所定作業服のポケットには、メモ帳、 ボールペン、スケール位は納っていなければならない。技術を覚えるこつは、 メモ屋になることである。この記録は速記術で、自分が後でみてわかればよく、 人前でみられないように書くことである。

 同じ実験をやっていても、その整理の上手下手で、上司や相手に理解や納得 され具合はまったく違ってくるものである。つぎの点を守ることがデータ整理である。

(イ)実験結果はその都度書く。
 大学の卒業研究では、よく、年度が終了する二ヵ月位になると、それまで行った 結果を整理しながらまとめる学生がいる。これは絶対に行ってはならないことである。 実験結果は毎日、グラフ化することが原則である。
(ロ)結果の表現は三通りくらい書く。
 グラフ用紙の縦軸、横軸に対し、通りいっぺんの作図はしてはならない。 XYZの図にするか、いろいろな方法で画いてみることである。とくに図表の種別に用いる 記号(◎○×)は混合しないようにする。
(ハ)データには必ずバラツキがある。
バラツキのない実験結果はほとんどない。故意のバラツキは別として、そのものは的確に表現できるようにする。
(ニ)取った結果の弱点を知り、生データの保存が大切。
(ホ)実験環境条件の明確化(季節、温度、湿度、時間など)
(ヘ)自分が見出した特異現象は大切に。
データにならない特異な現象を頭に入れること。